瀬戸芸2019-高松港~小豆島①(10/6)

旅行者というのは大体において勤勉である。

行程、目的地を念入りに検討し、思い描いた旅程を予定通りにこなすためには早起きも厭わない。

 

翻って己はどうか。

旅行好きを公言しながら、旅行に行こうと思い立つのは早くても出発の1日前である。当日に思い立った場合はお昼過ぎまで行くかどうか逡巡して、無駄に時間を浪費することもしばしばある。

 

瀬戸芸に参加した初日もその例に漏れず、起きたのは朝の9時だった。起きてから煙草を吸い、長いことぼーっとした後、その日の予定を考えているうちに、瀬戸芸の会期が終わりかけていることに気づく。パスポートも買ってあることだし行ってみるかと思う。

 

結局家を出たのが13時頃で、バイクに乗り11号線を辿って高松に着いたのが15時頃。

高松港フェリーターミナルが瀬戸芸の窓口にもなっているので、そこでパスポートを引き換える。

 

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3連休だったので、元々泊まる前提で来ており、次の日の行先は宿が取れたところにしようと思っていた。しかし、ゲストハウス何件かに電話するものの全滅。会期中はそもそも宿泊施設が少ないところに国内外の観光客が押し寄せているので、後から考えると無謀だった。

宿は決まらないが、とりあえず近場の展示を見始める。

 

①国境を越えて・海(tk02)

1作品目。高松港そばの公園エリアに鎮座している。

係員らしきおじさんがいたのでパスポートを提示するも、「要らない」と言われる。何だそのトラップ。作品名と番号が表示されている看板にスタンプがぶらさげてあるので、勝手にパスポートに押す。

 

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種のモチーフの船。漂流して波止場に打ち上げられた船。

解説を読む前は宇宙船のようだと思った。全面が広く宇宙に対して開けている船。根っこはブースター。今でもそんなに間違っていないと思う。

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蛙とか牛の小さな像が据えられていた。可愛い。ノアの方舟的な意味合いも持たせているのだろうか。

 

②銀行家、看護師、探偵、弁護士(tk03)

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高松築港駅前のパブリックアート。夕暮れの高松の退勤風景にマッチしている。

横を歩いてみると、彫刻が自分の横を本当に歩いているみたいで楽しい。

タイトルの通り、それぞれ職業が与えられているみたいだけど言われんと分からん。

 

tk06~10 北浜ギャラリー

高松駅から結構歩く。途中、宇高国道フェリーのターミナルの横を通る。

北浜エリアは元々宇高航路の倉庫街だったところをリノベーションして、お洒落な雑貨屋、レストラン、ギャラリー、結婚式場などとして改装した街区。

瀬戸芸期間終了後の話にはなるが、宇高航路自体が2019年末には廃止されてしまった。

 

③LEFTOVERS(tk07)

建物の間の細い路地に石のシャンデリアが吊り下げられている。

タイトルは、後で食べたりする残り物などを意味する言葉との由。

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石工が残した庵治石の破片、建物のスキマの細い路地、そしてこの北浜というエリア自体が宇高航路の倉庫街としての役目を終えている「LEFTOVER」。何かに使えるかもしれないと放置されていたぼんやりした存在、これらが組み合わさった作品。

解説を読まなければ単なる綺麗なエクステリアだけど、背景を知ることでとても愛おしいものに思えてくる。

 

④うどん湯切りロボット(tk09)

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2代目湯切りロボットの湯っくん。

くじを引いて当たりが出るとうどんを食べさせてくれる。芸術祭とは?

当たったので早速デモンストレーションしてもらう。タボにうどんを入れると、湯切りから出汁を注ぐところまでやってくれる。半玉まで湯切り可能とのこと。

初代の温(ぬ)っくんが1/4玉まで、湯切りのみ可だったのでそこから考えるとかなり改良されている。しかしビジュアルは温っくんの方が可愛い。

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⑤Watercolors(tk10)

瀬戸内海の海底に沈んだ人工物が作った漁礁の風景。はじめに海藻が取り付き、酸素と隠れ家を求めて小魚が、そしてそれを食べようとする魚が集まってくる。

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人が造った物が生み出す再生の景色、写真に映るあぶくがそれを感じさせる。海の底のモノクロの景色は涙が出るほど美しかった。

藻を模した帽子の展示もあった。カップルや友達連れが帽子を被って写真を撮っている。

自分としては珍しく自撮りで写真を撮ってみる。ちょっと気に入ったので瀬戸芸期間中のFacebookのプロフィール写真にした。

「どんなもんだろう?」と思って見に来た瀬戸芸だったけど、この展示がハマるきっかけだったと思う。この先どんな物が見られるのか、とても楽しみになってくる。

 

展示を見終わった後に何軒か電話して、瓦町駅付近のドミトリーに泊まることにする。

ウーロン茶を淹れてもらって店員さんと少し話す。瀬戸芸のために来たことを話すと、四国村はお勧めとのこと。

話しかければ愛想良く受け答えをしてくれて、話すことがなければ適当に放っておいてくれても息詰まりではない、距離の取り方がとても上手な人だった。

 

晩ご飯を食べようと商店街をふらつくもお店がなかなか決まらず、看板にキッシュと書かれているのに惹かれバルに入る。

キッシュは茄子と挽肉だったと思う。結構美味しかった。ポートランドクラフトビールと併せて頂く。瀬戸芸のガイドブックを読んでいると話を振られる。明日は小豆島に行くと言うとしばらくいっていないとのこと。地元の人ほど観光地って行かないよね。

 

宿に戻ってからロング缶2本を空ける。時計仕掛けのオレンジを読もうと思ったが全く進まず。

ベッドは合板に囲われたカプセルになっていてかなり快適。シーツもセット済。

12時頃就寝。

 

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北浜から高松港への帰り道で。